ケミカルバイオロジーを先導する明日のペプチド化学:新しい接点と可能性を探る

日本ペプチド学会により主催されるペプチドフォーラムは,広くペプチドに関連する科学やペプチド学会の活動について紹介を行うことを目的として企画されているものであります。第17回目でフォーカスされたケミカルバイオロジーは,化学と生物が融合した複合研究領域であり,近年急速に発展している分野です。有機化学的概念や手法,有機化学によって得られた化合物を活用して生命現象を新たな視点で解明・制御する研究がケミカルバイオロジーであり,生体機能分子の中でも重要なウエイトを占めるペプチド・タンパク質の科学と密接に関係しています。本フォーラムは,ペプチド科学を活用したケミカルバイオロジー研究を積極的に進めている先生方が話題を提供され,ペプチドを基盤とした生命志向型化学を先導する学術・方法論を考える契機となることを期待して開催されました。また,6月19日~21日にかけて同じく東京医科歯科大学にて日本ケミカルバイオロジー学会第8回年会が開催されたこともあり,当該学会にて招待講演をされた E. James Petersson 博士(University of Pennsylvania)及び Ines Neundorf 博士(University of Cologne)にも貴重なご講演を賜ることができました。梅雨時にも関わらず当日は天候にも恵まれ,大学関係者(58名)のみならず,企業からの参加者5名を加え,計63名の規模で開催され,非常に盛況なフォーラムでありました。各発表におきましては活発な討論が行われ,懇親会も多くの方が引き続き参加されていました。フォーラム開催の目的の1つであります「関連分野の研究者同士の新たな交流」も生まれ,非常に有意義な会であったと感じております。最後になりましたが,本フォーラム開催にあたりご尽力くださいました,東京医科歯科大学の玉村啓和先生,東京薬科大学の林良雄先生には厚く御礼申し上げます。

講演者と講演タイトル(ご発表順)

  1. 野村 渉(東京医歯大)
    「タグ-プローブシステムによる細胞内タンパク質の動態観察法の研究」
  2. 相馬 洋平(東大院薬/科学技術振興機構・ERATO)
    「アミロイドβペプチドを標的としたケミカルバイオロジー研究」
  3. 小出 隆規(早稲田大先進理工)
    「三重らせんペプチドのエンジニアリング」
  4. E. James Petersson(University of Pennsylvania)
    「Expressed protein ligation without cysteine: N-terminal protein functionalization with aminoacyl transferases」
  5. Ines Neundorf(University of Cologne)
    「From small molecules to particles - intracellular cargo delivery using cell-penetrating peptides」
  6. 林 良雄(東薬大薬)
    「ペプチド化学は筋肉関連疾患の治療に貢献できるのか?」