京都薬科大学薬学研究科 創薬科学フロンティア研究センター長
木曽 良明

タンパク質とその構成成分であるアミノ酸が科学者以外の一般の人々にもよく知られているのに比べて、ペプチドは長く無名でした。最近では、健康食品としてペプチドの名前が徐々に浸透して来ましたが、ペプチドの生理学的な重要性についてはほとんど知られていないのが実情と思います。

生理活性ペプチド研究の画期的な出来事としては、ノーベル賞受賞研究すなわち1955年の du Vigneaud によるペプチドホルモンオキシトシンの合成、1958年の Sanger によるペプチドホルモンインスリンの構造決定、1977年の Guillemin、Schally による視床下部ペプチドホルモンの研究、1984年の Merrifield によるペプチド固相合成法の開発が挙げられます。

現在では、生理活性ペプチドの作用機序の解明と立体構造解析、合成ペプチド誘導体の構造活性相関研究による医薬品への応用、生理活性ペプチドから出発したレセプター研究に基づく非ペプチド薬の開発、さらにはコンビケム、プロテオーム研究、ペプチドーム研究へと、ペプチド研究は広範囲へ広がり、人類の健康と福祉に広く貢献しています。

世界的に見ても、アメリカペプチド学会、ヨーロッパペプチド学会をはじめとして、日本はもとより、オーストラリア、韓国、ポーランド、中国、など各国にペプチド学会があり、国際交流も盛んに行われて、研究者が交流し、研究のレベルアップをめざしています。

このようなペプチド科学研究が更に発展し、人類の福祉に大きく貢献することを期待します。