今年で38回目を迎えました毎年恒例の若手ペプチド夏の勉強会は,平成17年8月3日から5日(8月6日オプション)にかけまして,長野県上伊那郡南箕輪村・大芝荘で開催いたしました。この度は,信州大学農学部の小木曽加奈以下学生15名と私で御世話させていただき,何とか無事に会を終えることが出来ましたので,世話人を代表いたしまして第38回若手ペプチド夏の勉強会の報告をさせていただきます。

まず,本年度から夏の勉強会は日本ペプチド学会(JPS)主催の行事として行われたことをご報告いたします。今回も最ベテランとして参加していただいた京大・藤井先生に開会の挨拶をしていただきました(突然お願いしたにも拘らず快く引き受けて頂き有難う御座いました)。JPS 主催になったことで,夏の勉強会の位置づけがはっきりし,より社会に認知される会になったため,外部からの協力が得やすくなり,幅広い参加者の受入が可能になったと思います。そして,今後より一層,ペプチド若手研究者育成への期待が高まると同時に JPS との連携が深まると予想されます。もっとも,会の運営は若手勉強会幹事会に一任するという,これまでどおりの運営方針を許可していただており,今回も自由にやらせていただきました JPS からは例年通り運営費の一部を交付していただきました。参加者を代表いたしましてお礼申し上げます。

本年度は,開催地が辺鄙な場所であったにも拘らず昨年度を上回る138名の方にご参加いただきました。信州大学農学部に程近い開催場所は,標高約800 mの高原に位置し,真夏でも高原のさわやかな風と緑を満喫することができ,温泉施設と充実したスポーツ施設を備えているため魅力的であった思います。また,昨年度の夏の勉強会での意向調査の結果,2泊3日開催を支持する方が多かったのですが,根強く3泊4日を希望する声もあり,今回は基本スケジュールを2泊3日で終了し,オプションとして3泊4日も可能にいたしました。その結果,2泊3日85名,3泊4日43名(1泊,無泊10名)の参加となりました。2泊3日開催でも人数に大きな変化はなかったと思いますが,2日目からの宿泊者が12名あったこと,4日目の催しが盛り上がったことを考慮しますと,オプションを設け日程に幅を持たせたことは参加者にとって好都合だったと思います。なお,繁忙期の格安で我侭なスケジュールは,大芝荘の多大なご理解とご協力があり実現したものであることを申し添えさせていただきます。

勉強会のメインである講演プログラムでは,特別講演5件,一般講演12件,ポスター発表と研究室紹介を兼ねたショートプレゼンテーション25件を行いました。特別講演のタイトルと講師の先生方は次の通りです。(発表順)「新規ジペプチド合成酵素のクローニングと性質解析」田畑和彦先生(協和発酵工業株式会社・バイオフロンティア研究所),「ペプチドホルモンと核内受容体(PPAR)による相補的代謝制御について」青山俊文先生(信州大学大学院医学研究科),「ポスドク@NIH 体験記~peptide bonds~」照屋健太先生(東北大学大学院医学系研究科・プリオン蛋白分子解析分野),「計算科学よもやま話」古田一匡先生(富士通株式会社・バイオ IT 事業開発本部),「生理活性ペプチド探索の為のペプチドーム解析」佐々木一樹先生(国立循環器病センター研究所・薬理部)。幅広い研究分野における最先端の研究を,参加者の中心である学生にわかりやすく講演していただいたおかげで,学生の積極的な討論への参加があり,大いに盛り上がりました。講師の先生方に深く感謝いたします。今回は5件の特別講演うち2件を企業(協和発酵工業株式会社,富士通株式会社)から話題提供していただきました。また,3泊4日限定の催しでしたが,事前アンケートのご意見をもとに企画した「学生討論」を行いました。「学生討論」とは,学生が独自に作成した資料(事前に指導教員の許可を受けたもの)を用いて発表を行い,その発表内容のみならず発表の態度,質問への応答,資料のセンスなどについて自由に討論を行うものです。この討論に学生以外は参加できませんので,ベテランの参加者は温かく見守るだけです。企画はしてみたものの真剣に取り組んでくれるのだろうかという不安がありましたが,学生討論は予想以上に充実した内容で盛り上がり,用意した時間を大幅にオーバーしてもなお討論し足りないという雰囲気でした。これなら学生同士の自己研鑽として面白い企画にできるのではないかと感じました。第35回から続いております夏の勉強会の活性化に貢献した若手研究者(学生とそれに順ずる人)として,一般講演部門 MVP に若林真樹さん(京大 M2),ポスター発表部門 MVP に前島靖勲さん(信大 M1),研究討論部門 MVP に若林真樹さん(京大 M2),今回の勉強会独自の学生討論部門 MVP(学生討論で最も優秀な suggestion を行なった人)に太田悠介さん(京大 M1)が参加者の投票によって選ばれましたので,表彰させていただきました。表彰者の方々には,益々の活躍を期待いたします。若い世代の積極的な討論参加の結果なのでしょうか,今回の表彰者は全てマスターコースの学生でした。これらの賞は夏の勉強会を盛り上げるために大いに役立っています。

今年は,基本スケジュール後になりましたが,広大なグランドを使ってソフトボールを行いました。炎天下で空気がかなり乾燥しておりましたが,大きく体調を崩す参加者もなく楽しい試合になりました。やはりここでも活躍の中心は学生参加者と思いきや,ベテラン参加者が大活躍でした。ベテラン参加者の腰を庇いながらの学生と同等,いやそれ以上の奮闘振りは,感動と涙を誘いました…お疲れ様でした。

夏の勉強会の目的の第一は参加者相互の親睦を深めることになっております。毎夜,ほぼ全員の参加による夜の自由討論が行われておりました。言うまでも御座いませんが,討論は大いに盛り上がり,一部では朝方まで行われていたと聞いております。密な討論を通して,なかなか得がたい横のつながりが形成されたようです。しかし,このような状況でありましても,ほぼ全員揃って熱心に講演を聴講したことをご報告しておきます。とにかく,無事に,今回も第一目標を達成できたことは,世話人として本当に安心しました。「ペプ討で会おう」と帰り際に言葉を掛け合って別れてゆく参加者が多々見受けられ,本会はペプチド討論会参加への動機付けにもなっているのではないかと感じました。

参加組織の代表者による幹事会において,昨年来,夏の勉強会のあり方として,2泊または3泊のどちらが適当かという議論が行われておりますが,議論は尽きず,結局,世話人の意向で日程を決めるということになりました。来年度の第39回若手ペプチド夏の勉強会は,2006年8月6日から8日に,群馬大学工学部山田圭一先生のお世話で群馬県草津温泉において行われることが決まりました。また,幹事会では JPS への要望が出まして,若手代表である佐賀大学・佐藤先生,次回世話人・山田先生が交渉して頂くことになりました。

以上,第38回若手ペプチド夏の勉強会の報告をさせていただきます。若手ペプチド夏の勉強会は,若手研究者が本音で研究を議論し検討できる貴重な機会であると思います。この勉強会が若手ペプチド研究者のレベルアップのため,より一層,発展することを祈念いたします。末筆ながら,参加者の皆様,ご協力,ご援助を頂いた皆様に心から感謝いたします。